3.インジウムのバイオソープション

 微生物が金属イオンを吸着する現象はバイオソープションと呼ばれ、細胞表層を構成するリン脂質やリポ多糖類(官能基としてカルボキシル基やリン酸基等)が金属イオンを捕集する。細胞表層がイオン吸着能を備えることで、細胞質への有害イオンの侵入が防御できる。


3.1 塩化インジウム溶液からのインジウムの分離

 グラム陽性細菌S. algaeによるインジウム (III) 吸着実験の結果(8) を図10に示す。10分程度の回分操作で、液相からインジウムを細胞に効率よく分離・濃縮できる。特に、初期濃度0.1 mol/m3の希薄溶液を対象にした場合には、実験開始から3分後にインジウム回収率が100%となり、迅速・高効率のインジウム回収が可能である。


3.2 リサイクル技術としての特徴と課題

 Shewanella 属細菌を利用するインジウムの分離濃縮・回収法(図11)には、i)従来技術に比べて環境負荷が小さく、エネルギーと物質の消費量を大幅に削減できる点、ii)希薄溶液(10~100 ppm)を対象に,回分操作では10分以内で、インジウムが微生物細胞内に分離・濃縮できる点、iii)インジウム含有細胞の乾燥(50℃,12h)によって簡便に濃縮物(インジウム含有率4%)として回収でき、その濃縮倍率は出発溶液(57 ppm)に対して約700倍にも達する点に特長がある。最近、使用済みLCDの塩酸浸出液を対象に本バイオ分離・濃縮法が適用できる可能性が示された。(14)

 インジウム以外のレアメタルとして、ガリウム、レアアースを対象に、バイオソープションが有効な回収方法であることが著者の研究で最近明らかになった。