4.マンガンのバイオリーチング

 リーチングは,有用成分を固相から液相に溶出させる固液抽出(浸出)のことである。(15,16) 海外では、低品位硫化鉱からの銅の回収法としてバイオリーチングが商業化されている。


4.1 マンガンの浸出機構

 マンガン酸化物のバイオリーチング機構を図12に示す。還元細菌 S. algaeは固体状酸化物を直接的に還元できないため、S. algaeが生産する鉄(II)イオンを還元剤に用いて、酸化物からマンガンを浸出させる。このバイオリーチング法には、マンガンの浸出に伴って生成する鉄(III)イオンを、S. algaeの作用で鉄(II)イオンに還元・再生できる点に特長がある


4.2 アルカリ電池屑からのマンガンの浸出

 廃棄アルカリ電池(32 wt% Mn、 22 wt% Zn、 3 wt% Fe)のバイオリーチング実験の結果(9))を図13に示す。還元細菌S。 algaeを接種するだけでマンガン浸出が著しく促進され、24 hの回分操作で浸出率が50%になる。浸出液に初濃度35 mol/m3の錯化剤(クエン酸塩)を添加することにより、24 h後のマンガン浸出率が80%以上にまで増大する。この場合、クエン酸塩による化学浸出(無菌対照)の寄与(マンガン浸出率20%)に比べて、S。 algaeによるバイオリーチングの寄与は4倍程度になる。この新規バイオリーチング法には、従来法に比べてマンガン浸出速度が10倍以上も向上する点に特長がある。