2.3 貴金属ナノ材料の新規調製法としての展開

 還元細菌による貴金属の還元・回収法は、貴金属ナノ粒子の室温合成法としても捉えることもでき、高付加価値化リサイクル技術としての展開が期待できる。


2.3.1 金属ナノコロイド

 化学的調製法では、生成ナノ粒子の凝集・沈殿を防ぐために、出発溶液に保護剤を添加する。バイオ調製法では、ペリプラズム空間に存在するナノ粒子を細胞破壊(アルカリ処理、超音波照射等)によって液相に取り出すだけで、分散・安定性の優れた金属ナノコロイドが得られる。これは、金属ナノ粒子とともに保護剤の機能を発揮する生体物質が液相に溶出したことを示唆しており、この点もバイオ調製法の特色である。


2.3.2 貴金属担持触媒のバイオ調製

 細菌細胞(=担体)の外膜近傍に貴金属ナノ粒子を高密度かつ高分散に合成できる点(図4,図5)は、貴金属担持触媒の調製法として大きな特長になる。



バイオ還元条件を制御して調製したパラジウム粒子は、市販品(パラジウム粉末、各種無機物担持)と比較しても、粒子径が小さく比表面積が大きいことから、液相化学反応(青色染料の脱色)における不均一系触媒13)として優れている(図9)。パラジウム担持細胞は、燃料電池用触媒10) としても良好な触媒活性を示す。